神様・仏様・お猫様 神社仏閣の猫 第33回 岐阜 「日本一社 お松大権現」

猫神様は勝負事・願い事の神様として知られ、最近では受験シーズンに合格祈願の参拝者で賑わう

日本一社お松大権現
徳島県阿南市

全国には昔から猫にまつわる伝説が多く残されている。徳島県にも飼い主に代わり恨みを果たした猫の伝説が残されていると聞き、阿南市へ向かった。

今から300年以上昔、この地では不作が続いていた。庄屋の惣兵衛が村を救うために自分の土地を担保に富豪からお金を借りたが騙され、間もなく病死。

妻のお松は、富豪が手を回していた奉行が取り合ってくれなかったため、死をも覚悟して厳禁されていた藩主への直訴を行い、愛猫とともに処刑されてしまった。

その後、主の遺恨を果たさんと猫が怪猫となり、富豪や奉行の家々を祟り復讐を成し遂げたという。

村の人々がお松と猫を哀れんで建てたのが儀理大権現で、昭和に入ってその名をお松大権現と変え、今でも多くの人々が訪れている。

参道へ向かうと鳥居と大きな招き猫があり、階段を上がると拝殿が現れた。この拝殿は戦後、宮司の阿瀬川寛司さんが建立したものだ。

神様へお参りをしようと賽銭箱に近づくと、大小様々な招き猫の置物が所狭しと並んでいて、正面には猫神様が祀られていた。「合格や必勝祈願の神様で『お猫さん』として親しまれています」と教えてくれたのは寛司さんの息子で禰宜の靖さんだ。

おまもりや絵馬の近くでは、ふく が控えめにも可愛らしく参拝者にア ピールしている

 

話を伺っていると社務所に猫が現れた。キジ白は「ふく(推定5歳♀)」、ハチワレは「たま(歳不明、♀)」、昨年夏頃から現れた「トラ(歳不明、♂)」の他に、近所の家で暮らす三毛猫の「ミュウ(歳不明、♀)」が元々境内で生活をしていた名残からか、時々遊びに来ているらしい。

とても人懐っこい たまは、よく遊びよく食べる活発な女 の子

 

拝殿の招き猫と同化してい るミュウ。いつの頃からか、招き猫を 社殿から借りて持ち帰って祀り、祈願成就後または1年後に数を倍にし て返す「勧請」という風習が生まれた

 

「私は生まれた時から猫と一緒に生活をしています。参拝者もふくやたま達の姿を見て喜んでくれています。猫によって気持ちが癒されている姿を見ると私も嬉しく思います」と靖さんは笑顔で話す。

社務所を覗くとふくが招き猫の間からときおり外の様子を見ていて、おまもりなどを踏まないよう器用に出入りをしていた。

たまはとても人懐っこく寝ながら撫でられている。2匹はとても営業が上手いなと感心してしまった。社務所が閉まる頃、帰ろうとお礼のお参りをしていると、たまが近寄ってきてスリスリ。

撫でてあげるとミャーミャーと気持ちよさそうな声で鳴いてくれた。

お松さんと愛猫の伝説が残る社とそこで生活をしている猫達、今後も猫神様に見守られながら地域に愛されていくのだろう。

小森正孝(写真・文)

にぎやかな境内から離れてひと息ついているふく。屋根上の飾りの猫と会話している?

 

ふくは靖さんの お母さんのことが好きで、お母さんに 呼ばれると駆け寄っていく

 

トラは みんなとは一定の距離感を保ちなが ら境内を散歩している。天気が良い 日で、優しく幼さを残した顔を見せて くれた

 

「我が家ではお爺さんの頃 から猫がいたようで、私は生まれた時 から猫と一緒の生活が当たり前だと 思っています」と靖さん

 

リアル招 き猫なたま。招かれればどんなおみくじも結びに行きたくなってしまう

 

日本一社 お松大権現
徳島県阿南市加茂町不ケ63
TEL 0884‐25‐0556
https://www.nekogami.jp

Komori Masataka
1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒業。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。
HP:https://komorimasataka.com/home

-猫びより