またタビ日記 保護猫を訪ねて⑥「空海伝説が残る寺院の招き猫」

境内を闊歩するニャン君。初めての参拝客にも寄ってきてくれる

 

愛知県岡崎市にある桜井寺(さくらいじ)は、弘仁4年(813年)空海(弘法大使)が開いたと言われる真言宗の寺院で、市街地から離れた山奥にひっそりと佇(たたずん)でいる。

戦国の世には今川義元、徳川家康、酒井忠次の信仰を集めた寺で、813年空海が桜の枝で作った杖を地面に突き立てたところ、清水が湧いたという弘法伝説があり、「桜の井戸」と呼ばれる井戸が徒歩10分の山中に現存する。そんな由緒ある古寺に住まうのがニャン君(推定11歳♂)だ。

ニャン君のお世話係の女性も、実家では猫が途切れたことがないという大の猫好き。実家から連れてきた白黒ハチワレの愛猫が亡くなった2年後、偶然にも鍵シッポまでそっくりなハチワレ白黒猫のニャン君が境内にやってきた。

最初は人見知りだったのに、だんだんと人馴れし、今では初対面の人にもわーっと寄ってくるくらいの人懐っこさ。市外から訪れるファンもいるそうで、ハナちゃん、ノラ君といくつかの名前で呼ばれているとか。

初夏に白い花を咲かせる山法師の木は秋に美しく紅葉する

 

大好きなお世話係さんと。でも抱っこは少々苦手

 

樹齢400年の山茶花(サザンカ)の下で

 

かつてニャン君には、サビ猫で砂利色だったことから名前がついたジャリ子ちゃん(推定3~4歳♀)という仲良し猫がいた。おっとりとした性格のニャン君は、お気に入りの寝床をジャリ子に譲ってあげたりととても優しい一面をみせていた。

一昨年の冬、ジャリ子ちゃんが病気となり、何日も入院して診てもらったが亡くなってしまった時、気落ちした様子がとても不憫だったそう。

風情ある赤門をくぐり、石段を登ると人の気配だけで駆け寄ってきてくれるニャン君。その愛嬌たっぷりの姿には、猫が苦手な人でも好きになってしまうほど。「地方は神社仏閣の衰退が進みつつあります。

この寺も今は前住職の兄弟が兼務していますが、正式な後継者が決まって訪れる人が増えてくれれば」と桜井寺の関係者は語る。ニャン君も、ともに寺を見守る住職が現れるのを待っていることだろう。

格式ある寺院のみに認められた朱色の山門

 

かつて、地蔵に願いを伝え、持ち上がれば叶うといわれた「抱き地蔵」


取材・原田佐登美

桜井寺
愛知県岡崎市桜井寺町本郷53
TEL 0564-82-3148
X(Twitter):@mikawagozan

-猫びより