この世界の片隅で、ネコ。EP:82「捨て猫奇譚」

あるお寺にとてもハンサムな猫が捨てられた。

なぜこんなに素敵な猫が捨てられたのか分からない程だ。それぞれの家庭には事情があるのは承知しているが…。

通る人通る人に何かを訴えかける。

「おなかがすいたよう」

「誰か拾ってくれよう」

と言っているようだった。とにかく捨て猫は許されない。しかし僕だって同罪、傍観者だった。その事についてはとても今でも心苦しい。

だけどハンサムな猫。何日かして飼ってもいいという里親さんが現れた。関係者全員で喜んだ。キャリーケースにもすんなり入り、彼は新天地へ出発。

しかし。

程なくして関係者に連絡が入った。彼を手放したいという。理由は。

「この子、高級キャットフードしか食べないのよ!他にも我儘だらけで…」

そんなに余裕のあるお宅ではなかったのか、家計を圧迫したらしい。きっと捨て猫はお金持ちのお宅の子だったのかもしれない。ああ…。

結局、比較的お金に余裕のあるお宅に再度、貰われていった。その後、悠々自適で暮らしているという。

猫の幸せって何だろう、考えてしまった。

TEXT&PHOTO/KENTA YOKOO

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