この世界の片隅で、ネコEP:73「わからない」

僕の好きなシチエ―ションがある。それは猫と人が触れ合っている時だ。ある時はじゃれ合い、ある時は引っ掻き回され、そして一緒に眠る。

ああ、いいなあ、と思う瞬間だ。猫と人の関係。

そのなかでも特に思い出すシチエ―ションがあった。

坂道の手前に気の荒い猫がいた。(なぜ知っているかって?実際に引っ掻かれたからです…)

ある日、白杖を持った目の不自由な方が介添え人と一緒にその猫を撫でていた。引っ掻かないか心配だ…。

その方の猫を撫でる手つきはたどたどしくも、まるで宝物を扱うように大事に大事に撫でていた。

その猫はじっとなでられるがままになっていた。あの猫が…。しばらくして背中をポンポンと叩き、その方は嬉しそうに坂道を登っていった。

ある日。とある公園で猫と遊んでいると、車いすの方がこちらへやって来た。介添えの方に視線で何かを伝える。車いすは猫のもとへ移動する。

そして車いすから猫をゆっくりゆっくりと優しく撫でる。猫もじっとして、気持ちよさそうな顔をしている。

4匹いた猫たちすべてを撫で終えて、その方は小さな声で「ありがとう」と言った。

僕は涙を流していた。猫と人のかたい絆を見た気がした。いや、魂と魂の絆を見た。

猫は感受性が強く喋れなくても何かを相手から感じ取っているように思う。ほんとうに不思議な生き物だ。

なぜ、こんなに猫と人の絆に惹かれるのか…よくわからない。

けれどわからなくてもいいんだ。ただただ、僕らと猫たちの絆が永遠に続けばいい。

TEXT&PHOTO/KENTA YOKOO

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