今度やってきた新入りは、図体のでかいやつ。がつがつ食べて、ウンチもでっかい。
猫小屋にセンセーションが巻き起こりました。
レモンおばさんとララおじいちゃんが旅立つのと入れ替わるように、新入りがやってきました。これまでの新入りと言えばたいていが、いたいけな子猫でした。
ところが……。やってきたのは、新入りという言葉からほど遠い雰囲気の、でっかいやつ。それに、どう見ても、捨てられたばかりの飼い猫でもありません。
猫小屋のみんなとうまくいくか、様子を見るためにケージハウスに入れられた大猫は、「ちくわ」という名前持参でやってきました。
よく食べ、朝昼晩と大きなウンチをします。
ゴローくんがのぞいたら、スッと目を伏せます。「オレ、ここの平和を乱すような厄介なオトコじゃないから」と、アピールしている風情です。
ケージから出てこないことには、強いんだか弱いんだか、気のいいヤツなんだか面倒なヤツなんだか、見当がつかず、みんな遠巻きに観察しているのでした。
2週間してケージから出されたちくわくんは、毛布の上で、うれしそうにコネコネといろんなポーズをしています。どうやら、屋根の下で暮らすのも、毛布で寝るのも、初めてらしいのです。
いろいろと苦労してきた猫生(にゃんせい)らしく、ごはんも最後に遠慮しながらも、しっかり大食するのです。
ちくわくんは、とある観光牧場にさまよいこみ、ちくわと呼ばれてこっそり餌をもらい、牧場内フーテンをしていました。
ところが、羊の行進などのイベントに自主参加したのを経営者が知り、「ジャマだ。捕まえて保健所だ」の宣告。
逃げ回っていたところ、アルバイトのお姉さんが、懸命に麻里子ママに連絡を取り、ここに運んでくれ、命拾いしたのです。
そんな苦労が顔に出ているオトコなのでした。
仲間ができ、追いかけられることもごはんの心配もなくなったちくわくん。
週末には、子どもたちに取り囲まれ、「この猫、大きいけど、なんかカワイイ」と、早くも人気者に。
「ちくわの背中には、天使の羽根とハートがあるんだから、しあわせにおなり」って、恩人のお姉さんも言ってくれました。
「むにゃむにゃ、オレ、ジャマないのちじゃないよね、ずっとここにいていいんだよね」
そんな寝言が聞こえてきそうなちくわくんの寝顔です。
写真と文:佐竹茉莉子
※犬猫たちの顔ぶれは、本書発行の2017年当時のものです。カフェは現在休業中。