猫の老化が見られる8 歳前後からは、今まで以上に猫の健康管理や 環境作りにこまめなケアが必要に。
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老化のサイン
老化の兆候は体のあちこちに現れる。反応や動きが鈍くなったり、口腔内のトラブルも出やすくなるので要注意。
● 飼い主の声や 大きな音への 反応が鈍くなる (聴力の低下)
● 足腰が 弱ってくる (筋力の衰え)
● 毛艶が悪くなる
● 口元や髭に白髪が混じる
● 目ヤニが出やすくなる
● 虫歯になる(歯周病)
● よだれが出たり口臭が強くなる
他にも…
● 毛繕いが減る
● 食欲が低下する
● 寝ている時間が増える
● 爪とぎが減る
● 代謝が落ちる など
猫は8歳頃からあちこちに老化のサインが見られるようになり、生活面でのケアも今まで以上に必要に。
ただ、シニア猫が過ごしやすい環境作りとストレスのかかりにくい生活、半年に1回は定期検診に行き、病気の早期発見・早期治療を心がけるようにすれば、最近では平均寿命の15歳を超えるご長寿も増えてきています。
猫が心地よい適度な距離を保ち、日々の生活にお手入れなども上手に組み込んで、猫のシニアライフを見守りましょう。
フード
シニア用に切り替える
高齢になると運動量が減り代謝も落ちてくるので、7 〜8 歳頃から低カロリーで消化のよいシニア専用の総合栄養食に切り替える(切り替え方はP47)。太りやすくなるのでこまめに体重を量り、1 歳時の基準値より15% 以上の増加があれば獣医師と相談して食事量を減らすなど、肥満防止に心がける。また腎臓の病気にかかりやすくなるため、水場を増やすなど水を飲ませる工夫を。
環境作り
シニア猫の気持ちになってみる
● ステップ
筋力が低下して足腰が弱まると、お気に入りの場所への上がり下りが困難になることも。箱を積むなどして、手作りステップを設置するとよい。
● ベッド
ベッドで寝て過ごす時間が増えるので、心地よい寝床を増やす。敷物を変えるなどして、夏は涼しく冬は温まる快適ベッドに。痩せてきた猫には床ずれ防止でベッドにクッションを敷くなどの工夫を。
● 餌場/トイレを身近に
ベッドから餌場やトイレが遠かったり(冬場は)冷える場所にあったりすると猫の足が遠のいてしまうので、できるだけベッドから近い場所にも設置しておく。
お手入れ
毛繕いをあまりしなくなるため、シニア猫は特に顔回りやお尻の汚れが目立ち、毛艶もなくなってくる。また、歯のトラブルも増えて歯周病などにもなりやすくなるので、こまめにお手入れして清潔に保つように心がけよう。
●ブラッシング
スキンシップをかねて毎日負担にならない程度にするように。毛艶がなくなるだけでなく毛量も減ってくるので皮膚を傷つけないよう力加減を。
●歯みがき
口腔内のトラブルが多くなるので、歯垢が溜まらないように定期的に歯みがきできるとよい。
●爪切り
シニア猫は爪とぎをあまりしなくなり、爪も引っ込まず出たままになるのでこまめにチェックして切るようにする。
ただし…
過剰なスキンシップやお手入れもストレスになりかねないので要注意。シャンプーなどは体力面も考慮して避けた方がベター。汚れが目立つ時は蒸しタオルなどで拭き取るように。適度なマッサージは血行促進やストレス解消になる。
ストレスを減らす工夫を
極力環境の変化を避ける猫は元来、環境の変化を嫌う生き物。シニアになるとその変化が大きなストレスになるため、馴染みの環境を極力変えずに快適に暮らせるよう心がけることが大事。
特に大がかりな模様替えやリフォーム、人の出入りが増える、新たな猫や他のペットを迎えるなどは猫にとって大きな負担になるので避けた方がよい。やむを得ない引っ越しなどは細心の注意を払うこと。
シニア猫がかかりやすい病気
歯石/虫歯
歯肉が赤く腫れて口臭が強くなり、虫歯の痛みで食べられなくなる。
腎不全
腎臓機能の低下で多飲多尿になり、進行すると尿毒症を起こす。早期発見・早期治療が鍵。
糖尿病
初期症状は多飲多尿。進行すると食欲低下や嘔吐など。肥満が原因でかかりやすくなるので要注意。
腫瘍
10歳頃からできやすくなる。しこりがあったり異変を感じたらすぐ病院へ。
便秘
慢性の便秘になりやすい。水分不足や食事が合わないことが原因となっている可能性も。
健康そうに見えても8 歳頃からは半年に1回の定期検診が病気の早期発見に。
あっぱれなご長寿猫
一般社団法人ペットフード協会が実施した「平成27年 全国犬猫飼育実態調査」の結果によると、国内の飼い猫の平均寿命は15.75 歳(家の外に出ない猫は16.40 歳、家の外に出る猫は14.22 歳)で、完全室内飼いの普及もあり、平均寿命も年々延びているといわれている。現在のご長寿記録が塗り替えられる日も近い?!
日本一は36歳
日本一は青森県の飼い猫「よも子」(♀)。1935 年(昭和10年)〜1971年(昭和46年)までの36 年半生きたという。人間でいう約157 歳。食事は「猫まんま」(残飯)だったそうだが、当時は恐らく外でネズミも捕食でき、栄養面でも理想的な食生活が送れていたと考えられる。あっぱれ!
世界一は38 歳
ギネスブックに認定されている世界一長生きした猫は、アメリカのテキサス州で飼われていた「クリーム・パフ」というメス猫。1967 年8月3 日に生まれ、2005 年8 月6 日に亡くなるまでの38 歳と3 日というご長寿記録を持っている。人間年齢に換算すると約165 歳。あっぱれ!
ご長寿猫には表彰制度も
ご長寿になるには猫の生命力はもちろん、家族の愛情と日頃のサポートは不可欠。
そんな猫と飼い主の二人三脚を称えて、表彰を行っているところがある。公益財団法人日本動物愛護協会の場合、愛猫が存命で満17 歳以上であることを証明できるもの(獣医師の診断書や年齢を証明する資料など)を添えて申請書を送れば無料の表彰状がもらえる。
各自治体などでも行っているところがあるので、気になる人はかかりつけ医や自治体に問い合わせを(表彰される年齢は各団体による)。
監修:南部美香
文:高橋美樹 イラスト:おかやまたかとし