若くして漁港に捨てられたマリちゃん。いろんなことがあったけど、潮風に吹かれてきょうも海辺を闊歩する。 ころんとした手足と大きめの顔を持つマリちゃんは、南房総にあるこの漁港の主のような雌猫である。 漁協直営の「ふれあい市場」の人たちみんなに、可愛がられている。 寒い季節はあまり外に出ず、市場の従業員休憩所でぬくぬく過ごすが、暖かくなってくると、朝から漁港内の見回りに精を出す。 「マリ姐さんが見回り中だ」と、若い猫たちが遠くから見つめる中、悠然と一帯をのし歩く姿は、女ボスの貫禄十分だ。 「変わりはないようね」 ...