田んぼに囲まれた丘の上にある美術館には、猫がいっぱい。通い猫である虎之介くんには、こんな思い出が……。 ボク、美術館の通い猫、虎之介。週末の美術館の開館日だけ、絵描きのママの車で出勤してるんだ。 10月のある土曜日、いつものように、お庭でカマキリをおちょくったり、マツボックリ集めをしたり、木登りしたりしてひとり遊びしていたら、キャリーケースを下げた人がやってくるのが見えたんだ。 美術館でいちばん古株のミー姐ねえさんとボクは、すぐに駆けつけた。だって、キャリーからは、知らない猫の匂いがしたんだもん。 やっぱ ...