写真・文/小森正孝
▲どこか気品を感じる素敵な男の子。門前で出迎えてくれたアン太
▲紫陽花の季節は多くの参拝客が訪れる。花盛りの境内を歩くアンジェ
山麓の門を抜け、長い階段を登ると広がる白い石畳、その先に本堂が見えてきます。高野山真言宗 矢田寺は日本のお地蔵様発祥の寺といわれ、初夏は紫陽花寺としても有名です。
創建は約1300年前、天武天皇が壬申の乱で戦勝祈願のために建てた寺です。かつては48の僧坊があった塔頭寺院で、現在は北僧坊南・南僧坊・念仏院・大門坊の4つからなり、中でも北僧坊は一番古い坊です。
▲石の穴に溜まった水を飲むウルル
先代住職は犬派だったそうで、猫好きだった奥様・寺本敦子さんは、嫁いできた頃に部屋でこっそり猫を飼っていたのだとか。子どもの頃から猫がいる生活が普通だったので、当初は、猫が煙たく扱われていることに驚いたと笑います。今は、茶トラの長毛・ウルル(10歳♂)、その妻アンジェ(4歳♀)、2匹の間に生まれた子どもたちが境内で暮らしています。
▲ ダイフクが屋根の上から参拝客を見守っている
▲(左から)お父さんのウルルと息子のダイフク、アン太がお出迎え。頼もしい父の姿に、尊敬の眼差しを向けている息子たち
賢いウルルは人間の言葉を理解したり空気を読んだりするそう。子猫たちが悪さをすると、きちんと叱ります。取材時は、アンジェと息子のダイフク(6ヶ月♂)が喧嘩をしそうになった時、間に入って止める一幕も。敦子さんはそんなウルルに信頼を寄せています。
「ある時ふと、猫に支えられ色々なことを教わっているのに気づかされました」と敦子さん。「猫は背伸びをしません。人間のように必要以上に自分を大きく見せようとせず、ありのままの姿で日々を過ごしています。また家族を大切にし、体調が悪い子がいたりすると、みんなで見守る優しさもあるんです」。
最近は参拝客にも猫好きな方が増えたとのこと。境内では、ウルル・アンジェ夫婦とその子どもたちが、今日ものんびり参拝客を出迎えています。
▲下駄を枕に昼寝中のウルル
▲参拝客に撫でられるダイフク。猫たちに会うために遠方より訪れる人もいるという
▲透き通った瞳がとても美しい「母の顔」アンジェ
▲外の様子を見に来たウルルと、敦子さんに抱っこのアンジェ
▲ペロリと舌を出す姿が可愛いアン太
▲本堂の前でご挨拶
高野山真言宗 北僧坊 矢田寺
奈良県大和郡山市矢田町3516
TEL0743-53-1531
Masataka Komori
1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。写真集「ねんころ」(株式会社KATZ)等。WEBサイト「にゃんこマガジン」にて「小森正孝のスマホで猫写真」連載中。
https://nyanmaga.com