その日は雨が降ったりやんだり。空を見上げればどんよりした雲が近づいてきた。 雨の匂いがする。なにか湿った土のようなあの匂い、大地の匂いだ。 ああ、これはまた降ってきそうだ。どこかで雨宿りしなければ。ちょうど古い神社がすぐ近くにある。 神社へ入ろうとすると…あ、"主"がいる。 主は神社を縄張りにする茶トラ猫だ。 顔を洗っている…ほほう、確かに「おいでおいで」している様に見える。 つまり豪徳寺の招き猫だ。井伊直孝もそれは勘違いしてしまうだろうね。 曇り空からポツリポツリと雨粒が落ちてきた。 主のお招きを受けて ...