
優しい笑顔で強を見つめる動物管理センター長の玉嵜さんと堂々たる共生センター長の強
神戸市北区にあるこうべ動物共生センターでは、歴代、猫がセンター長を務めているという。今年10月に、4代目センター長に任命されたのは、キジトラ猫の強。気になる強のキャラクターと、センターの仕事についてお話を伺ってきた。
文・写真 八二一
動物との共生を目指して
兵庫県神戸市北区の都会からほど近い、自然豊かな山中に広がる「しあわせの村」にやって来た。山全体を使った見渡す限りの広大な敷地の中に、キャンプ場や宿泊、温泉、スポーツなどのさまざまな設備がある総合福祉ゾーンだ。
そんな緑に囲まれた美しい景観の一画に、こうべ動物共生センターがある。3年前に神戸市の動物愛護拠点として犬猫の譲渡と教育啓発を行うことを目的として設置された。
神戸市では平成29年に、「神戸市人と猫との共生に関する条例」通称「猫条例」が施行された。日本で初めて猫に特化したというこの条例のもとに、猫の殺処分を減らし、不妊手術や地域猫活動の支援など、人と猫とが共生するまちを実現するための活動に力を入れてきた。
神戸市には、動物管理センターとこうべ動物共生センターの2つの施設があり、迷子や飼えなくなった犬猫の収容を行うのが、動物管理センターの仕事。施設にやってくる猫たちは、病気や怪我、迷子で保護された子、また最近では、高齢な飼い主の入院や施設への入所などのために飼いつづけられなくなり、やむを得ず引き取るというケースも増えてきているという。管理センターでは、怪我などの応急治療や不妊手術といった医療処置も行われ、譲渡に向けての準備がなされる。

前センター長のとらまると、キャリーに収まる強
そして、こうべ動物共生センターでは、犬猫の譲渡だけでなく、アニマルセラピーなどの犬猫とのふれあい事業、しつけ教室やいのちの教育などの啓発プログラムも行っている。センターの名称には、愛護だけではなく、人と動物が一緒に生きていこうという理念が、「共生」の二文字に込められている。
そんなこうべ動物共生センターの今年度のセンター長に、キジトラ猫の強が任命された。
8.5kg の超大物
共生センターでは施設がオープンした当初から、猫がセンター長を務めている。今年の10月に、3代目の前センター長のとらまると交代式を行い、強が4代目センター長となった。
センター長交代式

4代目センター長に任命されてインタビューを受ける強(8歳♂)

3代目センター長を務め上げたとらまる(1歳♂)には感謝状とご褒美のおやつが贈られ、新しい家族の元に巣立つことになっている
(写真提供・こうべ動物共生センター)
センター長のお仕事は、主に見学者のお出迎え、Instagramの更新などの広報活動だ。
丸くて大きな顔に、ボディも大きめ、インパクトが強くキャラが立っている強は、「強めっちゃいい味出してる」「強好きやわ」と来訪者からコメントが寄せられるほど大人気だ。
センター長の仕事

Instagramを更新する強

イベントで一般来場者に囲まれる強。みんなに平気で撫でられる大物ぶり
(写真提供・こうべ動物共生センター)
職員の寄本さんが、キャリーに入った強を持ち上げたら、驚くほどずっしりと重かった。センターで体重を計ってみると、なんと、8.5キロの巨体であった。
「センターには、あまり大きい子が入ってくることがないので、びっくりしました」
その後、「ダイエットフードで体重を管理して、がんばって7.5キロになりましたよ」と、笑顔の寄本さん。
猫の名前は、神戸市のふるさと納税を活用したクラウドファンディングにおいて、出資者から募集した名前の中から、スタッフ
が選出しているとのこと。寄せられた強という名前は、ぴったりだねと、満場一致で決定した。
心優しいみんなの見守り役
強は、推定8歳。最初から大人しくのんびりとした性格だった。猫同士のケンカとは無縁の平和主義。やんちゃ盛りの子猫が多い共生センターの中で、渋い大人の貫禄を見せる強は、みんなを優しく見守っている。
これまで、子猫から選ばれていたセンター長だが、今回、8歳の強が選出されたのは、「キャラが強いこともありますが、今回のセ
ンター長候補は、まだ譲渡希望が出ていない猫から選出したので、その時に強にはまだお声がかかっていなかったというのもあり
ます」と話してくれたのは、動物管理センター長の玉嵜さん。
譲渡される猫たちは、子猫から決まっていくことが多い。「成猫がセンター長になることで、強をはじめ成猫にも声がかかるチャンスが増えることも願っています」と玉嵜さん。
プレイルーム

猫たちが自由に過ごせる広々としたプレイルーム。施設に見学に来たお客さんもこちらでお出迎えする。
強はいつもこの部屋で過ごしている

職員の寄本さんになでなでしてもらう甘えん坊のチャタ(4歳♂)

お気に入りのちぐらに座る強と、上にいるのはサビ猫のべっこう(7ヶ月♀)

大きな声で鳴いてアピールする好奇心旺盛でやんちゃなテラ(6ヶ月♂)
現在、共生センターでは、12匹の猫が新しい飼い主を待っているが、先代センター長のとらまる以外は、ほとんど強の後に入ってきた子たちだ。強は、子猫たちを受け入れ、見送ってきた

トリミングルームセンターには4室の個室があり、多頭飼いにストレスを感じる猫などは状況に応じ、部屋割りされる。
中にはケージが用意されていて静かに過ごせる
玉嵜さんいわく、猫のセンター長がいることで、SNSを見てくれる方が増えて喜ばしい反面、任期中に譲渡のチャンスがなくなるのではないかという悩みがあった。これまでは1年だった任期も、強を期に今後は、臨機応変に対応していこうと考えているそうだ。
「かわいい盛りの頃に、ここにいるのはどうかなと思って。家でかわいがってもらえるのが一番よいですから」
ポツリと言った玉嵜さんの言葉が印象に残った。

足を広げてお腹を出した強お得意の座り方
当の強は、得意のお腹を出した座り方で、マイペースに毛づくろいをしている。
神戸市からの猫の譲渡は、兵庫県民が対象となる。センター長になったばかりの強だが、職員の皆さんは、すべての猫たちを、里親のもとへ送り出せることを願っている。
自然豊かな環境
しあわせの村の中にある緑に囲まれたこうべ動物共生センターは赤い屋根が美しい建物
トリミングルーム
犬用のドッグバスやトリミングルームも完備されている
こうべ動物共生センター
兵庫県神戸市北区しあわせの村1-21
TEL 078-747-3061
https://kobe-chai.jp
Instagram:kobec.h.a.i