猫と付き合ううえで大事だと思っていることがある。
それは「距離感」。
はじめて出会った猫に触らせてもらおうとして近付くとほぼ逃げられる。ましてや急いで走りだしたりすると脱兎の如く逃げられる。
基本は足繁く通い「悪い人間」ではないという信頼を得ることだと思う。そしてやっと触らせていただく。これでやっと友達…かな?
お寺のクロは飼い猫という事もあって人懐っこく、すぐに友達になれた。
「距離感」は思わず「近い近い!」と言ってしまうぐらいフレンドリーだ。
カメラなんて構えるとレンズに親愛の頭突きをくらわせてくるほど。ここまで距離が近いと、つい無遠慮になってしまいがち。
一度、おなかをワサワサしようとしたら
「コラッ!」
と猫パンチでたしなめられてしまった。
クロの同僚、レイちゃんは真逆の性格で触らせてくれない。しかも近距離でレンズを向けるとプイッとそっぽを向いてしまう。
しかし。出会った頃のレイちゃんは、触れてもちょっとビックリするぐらいだったのだ。
それで調子に乗ってしまったのが運の尽き。
背中を撫でさせてもらっていると、だんだん尻尾をパタパタし始め結局どこかへ行ってしまう。カメラを向けると「ああ、またアレだ」とうんざりした顔で顔をそむける。
「距離感」を縮めすぎたのだ。
僕の顔を見ると露骨に嫌そうな顔をするまでに関係が悪化した…ほんとゴメンよ、レイちゃん。
改心して、それからは適切な「距離感」を保つよう心掛け、写真も遠くから望遠で撮るようにした。
するとどうだ。レイちゃんは許してくれたようで出会った頃くらいの距離感を取り戻させてくれた。
やはり猫でも、当然ながら人間でも「信頼」を得ないと何もうまくいかない。その為の「距離感」は大事なんだ。
そう、"親しき中にも礼儀あり"。猫から改めて教わった。
TEXT&PHOTO/KENTA YOKOO