のりえさんの夫は、亡くなる前にこう言い残した。「猫たちは、1匹も手離さないでほしい」と。 のりえさんは、とても若い時、家を飛び出す形で、夫と一緒になった。音楽が大好きな夫婦だった。 タクシー乗務の仕事をしていた夫は、寄る辺ない猫を見つけると、見過ごすことがどうしてもできない人だった。 近所だけでなく、会社、待機場所、出先などで、困っている猫を見つけるたび、家に連れて帰った。 奥さんが、猫は触れないほど苦手だったのにも構わずに。 夫は、猫の世話を続け、餌代や手術代に、自分の小遣いはすべてつぎ込んだ。 猫は増 ...