2匹並ぶと漢字の八の字になる奇跡の模様を持つ姉妹。保護されてから家族に出会うまでの経緯もすべてが奇跡の連続で、インパクト抜群の模様も偶然ではなく必然に見えてきそうです。
写真・みやちまん Text by Saito Minoru
「八の字」姉妹と出会う
「神社に放置された籠の中に子猫が4匹いる」
ある動物保護団体に相談が寄せられました。子猫は恐らく生後3ヶ月未満。オスとメスが2匹ずつで状況から察するにきょうだいだろうとのこと。団体の人が駆けつけて保護したものの、顔は目やにと鼻くそまみれで、猫風邪をひいていました。2匹のメスは特に調子が悪かったそうですが、それも丁寧なケアで快復し、里親を探すことになりました。
それから1ヶ月ほど後のこと。夫の転勤でペット可の物件に引っ越したばかりのみやちまんさんは、「せっかくなら保護された子を」という気持ちで保護猫の譲渡会に行き、そこで「丸子と由比」という子猫の姉妹に出会いました。あの神社で保護された2匹です。1匹は右の目と耳の間に、もう1匹は左の目と耳の間に書道家が斜めに一筆入れたかのような模様があり、並べば「八」の字に見えました。
「慣れない場所で知らない人たちの目に晒されて、2匹は緊張しているようでした。思いのほか小さくて本当に可愛いなと思いつつ、怖がらせてしまうかもしれないのでケージを覗くのを遠慮していました」
儚(はかな)げで頼りなさげな姿と裏腹に、ケージに貼られた紹介カードには「とーっても元気な姉妹です」「遊び方が激しいのでモノを壊したりしちゃいます」と書かれていました。すっかり縮こまっている目の前の子猫たちとのギャップに驚いたみやちまんさん。実はやんちゃな子と暮らしたいと思っていたこともあり、2匹が暴れているところを見てみたくなったのでした。
やんちゃな子猫たち
保護団体に求められた条件は、子猫だから頻繁に通院ができて、長時間の留守番をさせることなく、家中を暴れ回るやんちゃを許容できること、そして2匹一緒にお迎えできることでした。みやちまんさんは在宅勤務がメインなので長く家を空ける日は少なく、通院も比較的融通が利きます。やんちゃは望むところだし、何より2匹が並んだ時の模様と圧倒的なペア感に「この姉妹を引き離すわけにはいかない」と決心を後押しされたのです。
そして迎えたトライアル。初めこそビビってケージの底に潜り込んでいましたが、3時間もすると右に模様のある子が恐る恐る出てきました。それに左の子が続いて、あちこちを探検。3日目にはスーパーボールのように家中を跳ね回っていたのでした。部屋に小物を飾るのを諦めたものの、みやちまんさんの決意は揺るがず、トライアル期間が終わる頃には、正式にお迎えするならと2匹の正式な名前を考えていました。
しかし、しっくりくる案が思い浮かびません。ふと2匹の写真に目を落とした時、閃きました。「八の字模様になる時の並びで
名前を決めればどうだろう!?」こうして顔の右に模様がある子がナナ、左にある子がキュウと命名されたのでした。
ずっと一緒に過ごしながら
見た目こそ左右対称で全身の配色もそっくりの2匹ですが、性格はずいぶん違うようです。
「ナナはおっとりで細かいことを気にしません。どっしり構えて度胸があるので、いたずらはナナが先に仕掛けて、キュウが隣で見ていることが多いかも」
開けてほしくないクローゼットや部屋のドアを持ち前の運動神経とジャンプ力で開けるのはいつもナナ。ウンチの後始末は時間を
かけて砂を掻くのに、全く本体にかけずにいつも剥き出しにしておくのが流儀です。キュウは落ち着きがなくてせわしない性分で、よく「プルル」「パルン」とひとりごとを言います。呟きながらせかせか動くのでとてもコミカル。繊細な甘えん坊で、ナナとは逆にウンチを必ず砂で隠す几帳面さも見せてくれます。
「引っ越し先の譲渡会で出会ったのも奇跡。やんちゃな子を探していたのも奇跡」というみやちまんさん。一日のほとんどの時間を一緒に過ごし、しばしば在宅勤務を邪魔されながら、姉妹との絆はますます深まっている様子。
「猫という生き物の性質上、ベッタリというよりはお互い信頼しあって背中を預けているよう」と感じることが多い今日この頃なのだそうです。