神社仏閣の猫 高野山真言宗 長岳寺 奈良県天理市

写真・文/小森正孝


▲本堂の軒下を歩く姿を見ると、ゆっくりとした時間の流れを感じる

日本最古の道「山の辺の道」の沿線にあり、古代王権時代の記憶が今も残る奈良盆地に、高野山真言宗 長岳寺がたたずんでいる。山門を入り、つつじの道を通り抜けた先には重要文化財の旧地蔵院や日本最古の鐘楼門が見えてくる。

長岳寺は天長元年(824年)淳和天皇の勅願により弘法大師が大和神社の神宮寺として創建した。かつて四十八ヶ坊を抱えていたが、今では室町時代の書院造りの様式を残す旧地蔵院のみとなった。

さっそく猫たちが出迎えてくれた。当院では飼い猫が2匹と、数匹の猫が生活している。飼い猫の「まる」と「シマ」は、以前いた「はな」の子どもで、はなは人が好きで、団体客が来ると本堂まで案内した。外の猫たちには名前がなく、「自由猫」等の名称で呼ばれていて、境内で気ままに暮らす。中でもサビ猫は人懐っこく、住職に抱かれたり参拝客にすり寄って甘えている。

文献によると、江戸時代、長岳寺から尼寺に猫の子を譲り、お礼に柿を長岳寺に収めたとか。鼠退治のためか、愛玩用としてかは定かでないが、思わず頬が緩む。

住職の北川慈照さんは子どもの頃からの猫好き。曰く「猫に限らず人以外の生き物は、悟りに近いものを持っているように思います。過ぎ去ったことを悩んだり、先のことを心配することなく、今を懸命に生きています」。そして笑顔で付け加えた。「猫を見ていると癒やされます。彼らの仕草を見ていると、勤労意欲が無くなるでしょ」。

つつじやかきつばた、紫陽花が美しい「花寺」としても有名。花の季節に、また猫たちに会いに来よう。


▲住職の膝の上が好きな、まる


▲旧地蔵院の門の上で。ここには室町時代の庭園があり、猫も自由に出入りできる


▲旧地蔵院の軒下で2匹の猫が毛繕いをしながらのんびり過ごしていた


▲拝観時間も終わりに近づき、静かになると遊び始めた


▲目覚めたら、猫集会が始まるのか、それともご飯を食べに行くのかな


▲猫がいないか思わず探す。あ、見っけ!

高野山真言宗 長岳寺
奈良県天理市柳本町508
TEL0743-66-1051
http://www.chogakuji.or.jp

Masataka Komori
1976年生まれ、愛知県一宮市出身。大阪芸術大学写真学科卒。同大学副手として研究室勤務。現在フリーカメラマンとして猫撮影を中心に活動。写真集「ねんころ」(株式会社KATZ)等。WEBサイト「にゃんこマガジン」にて「小森正孝のスマホで猫写真」連載中。
https://nyanmaga.com

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