この世界の片隅で、ネコ。EP:87「狛猫降格」

東日本大震災前の仙台に居た頃だ。近くの神社に猫の親子が居た。

皆、思い思いに違う名前を名付けて可愛がっていた。

有志の厚意で去勢・不妊もすませていた。チョビ母さん、太郎、次郎。そう名付けた。次郎はトラックの荷台で昼寝中に山奥へ運ばれていったが無事に保護され余所で暮らしている。

狛犬ならぬ狛猫。仲良く2匹で昼寝している姿は、しかしどこか神々しかった。

狛犬は魔除けの意味もあるらしい。狛猫は賽銭泥棒くらいなら除けてくれるだろうか…多分、何もせず見てるだけだな。

ある日、賽銭が盗まれる事件があった。それ以来、神社はセンサーライトを付けた。そして随分遅い時間に神社へ寄ってみるとライトが点いたり消えたりしてた。

あっ賽銭泥棒だ!

しばらく様子を見ていた。ずっと点滅を繰り返していたので参拝者ではない。意を決して神社へ…。

ところがそこに居たのは太郎だった。賽銭箱の辺りをウロウロしてたのでセンサーが反応したのだ。

"賽銭泥棒よけ"どころか"賽銭泥棒まがい"。

そういえばよく賽銭箱の隣で寝ていた…。

太郎は参拝している人が鈴を鳴らしても驚いたりしない。それどころか鈴緒にじゃれついて鈴を鳴らしたりする。そういった姿も神々しいがこの"賽銭泥棒疑惑"。

しばらくの間、太郎は"狛猫"から"泥棒猫"に降格された。

TEXT&PHOTO/KENTA YOKOOO

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