この世界の片隅で、ネコ。EP:75「長屋の猫たち」

時代から取り残されたような古い長屋がある。そこに住む猫たち。古いから鼠が出るそうで猫はかかせないんだとか、つまり立派な"職業猫"だ。

彼らは長屋をよく知り尽くして、日々パトロールをしている…というか遊んでいるだけだけど。

特に彼らが集まるのが二階にある木製の物干し台。西日が当たり太陽が気持ちいい。ここで居眠りを決め込んだりじゃれあったり…あんまり働いてないな。

長屋の方が洗濯物を干しに来てもお構いなしで微動だにしない。猫もよくわかっていて洗濯物に悪戯する事はない。

長屋の方もそれをわかってらっしゃるので特に気にしてない。猫と人、良好な関係を築いている。

ある日。

物干し台でじゃれあっていた2匹の猫が段々と本気になり大喧嘩をした事があった。

唸りあう両者、隙あらば飛びかかろうとしている。そんな時、物干し台におばあさんがやって来た。布団を干しはじめ、そして布団たたきでバンバンッ!と勢いよく叩く。

猫たちはその大きな音に明らかにビビっていた…が喧嘩の真っ最中だ、引くに引けない。

すると。

今度はおばあさん、2匹の猫の間を縫いパンパンッ!とタオルを強く降る。

それが片方の猫にクリーンヒットした!さすがに凄い勢いで逃げていってしまった…おばあさんは再びタオルをパンパンッ!とやる。

もう片方の猫、固まっている…。

"あら、ごめんなさい"とでも言ったのかな。洗濯物を干し終わり何事もなかった様に去っていった。

今日も屋根上で猫が居眠りしている。過去にタイムスリップしたような、なぜか懐かしい景色だ。

またおばあさんが物干し台でシャツをパンパンッ!とやっていた。

TEXT&PHOTO/KENTA YOKOO

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