「くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ」いつもボクがそばにいるよ!

くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ

くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ

最高の介護士

くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ

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広島県在住のはるさん(41歳)のお宅には、豆シバ犬のしのちゃん(17歳♀)と7匹の猫がいる。全員、縁あって保護され、ひとつ屋根の下で暮らす仲間だ。

午後のやさしい光のなか、しのちゃんは、サークルの中でぐっすり寝入っていた。3年前から認知症を発症し、夜から昼にかけては30分から1時間おきに目を覚ますという昼夜逆転の生活が続いている。視力や聴力がほとんどないため、不安なのだろう、毎回「ワン!」と大声で人を呼ぶ。

はるさんは、そのたびにしのちゃんを抱き起こし、おしっこで濡れたシーツを取り替えてやったり、軽い運動をさせたりする。はるさんが毎日頑張れるのは、くぅちゃんという何とも頼もしい介護士が強力に助けてくれるからだ。

くぅちゃんは、白黒のオス猫で、7歳。初めて見かけた時から、年齢も種も超えて、しのちゃんにラブラブ状態が続いている。

ふたりの出会い

しのちゃんがこの家にやってきたのは、6年前。車道の真ん中をあっちへ走り、こっちへ走りして、大渋滞を巻き起こしていた犬を、はるさんが保護したのだ。首輪からはドブのような悪臭がし、全身皮膚病で、長い放浪生活をしのばせた。動物病院で、10歳は超えていると言われる。

その1年後にやってきたのが、くぅちゃん。職場近くで、ハルさんの目の前を通り過ぎて、バタンと倒れた1歳くらいのノラである。くぅちゃんは、腸に炎症があって食べては吐くを繰り返し、トイレもなかなか覚えず、しばらくは毎日洗濯物をどっさり作ってくれた。

夏のある日。玄関の格子戸越しに外を見ていたくぅちゃんの目が、急にキラキラっと輝いた。お庭飼いだったしのちゃんが、一瞬目の前を横切ったのだ。「今のは誰? と私を見上げた目は、明らかに一目惚れ。その日から、玄関にへばりつき、しのに少しでも近づこうとして、いじらしかった」と、はるさん。

手を伸ばしてはボデイタッチ。玄関にしのちゃんが寝るときは、夜這いして添い寝。しのちゃんはクールで、くぅちゃんの片思いは続いたが、めげずにアタックし続けた。

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やっと、両思い

4年前、引っ越しを機に、しのちゃんは室内飼いに。くぅちゃんは、晴れて四六時中、恋しいしのちゃんのおそばにいられるようになった。くっつきすぎて、「ワン」と吠えられもしたけれど。

しのちゃんに異変が起き始めたのは3年前。

家具のすき間に頭をはさんで往生したり、後ずさりができなくなるなど、認知症の兆候が現れたのだ。そのたびに、くぅちゃんは、はるさんを呼びに走った。2階ではるさんが寝ているときは、「こっち、こっち」と、階段を駆け下り先導する。

昼夜逆転や、同じところをグルグル回る徘徊も始まったため、サークル内生活となったしのちゃん。目にできた結石の手術も2回。皮肉なことに、認知症が始まってめっきり穏やかになったしのちゃんは、くぅちゃんの愛をまるごと受け入れたのだった。

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ずっとずっといっしょ

くぅちゃんの介護は、それはそれはこまやかだ。いつもそばで待機し、相手の気持ちを汲んで、先回りしてお世話をする。

食事時にも付き添い、味見をする。しのちゃんがサークル内で歩きだすと、そっと寄り添う。ほんの少し先回り先回りして、しのちゃんのが前のめりに倒れそうになると、自分の頭をしのちゃんのあごの下に押し入れる形で支える。

しのちゃんが、うとうとし始めると、お母さんがわが子を寝かしつけるように、やさしく毛づくろいをしてあげる。耳の内側、まぶたの上、ほっぺた、あごと、それは念入りに。そんなときのくぅちゃんは、「ボクのしのさん」とばかり、至福の表情だ。

はるさんは、言う。「くぅは一番手のかかった子だったけど、半身不随のらいをはじめ、誰に対してもやさしい子。しのには『好き』の度合いが違いますが(笑)。いつもそばにいたくぅが、変わらずそばで支えていることだけは、今のしのにも、よくわかっていると思います」

好きになったのは、種の違う年上の女ひと。

たとえ相手が認知症になっても、そばにいられる日々は、くぅちゃんにとって、キラキラ輝く純愛の日々であるに違いない。ずっとずっと、いっしょにいられるといいね。

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文・写真 佐竹茉莉子

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