この世界の片隅で、ネコ。EP:62「忘れ物」

「忘れ物」

ねこじゃらし。子供の頃、ひっこぬいて野良猫と遊んだ記憶がある。

猫は喜んでじゃれついてきた…はず。

もう何十年も前なので記憶があいまいだけど。

大人になって同じようにねこじゃらしで猫をじゃらしてみると…これが全くじゃれない。

何回やっても、どの猫でやってもじゃれないのだ。しまいには"シャー!"と怒られる。

なにが違うのだろうか?

大人になって、それなりに猫の特性を理解して動かしてるのだが…。

おかしいな…とか言いながら何もせずにいると、猫じゃらしを自らパンチして遊び始めた猫がいた。

こりゃだめだ。

だけどそりゃそうだよな、デカい男が"ほらほらほら~♪"とか言って草をぶらぶら差し出して近づいて来たら怖い。

しばらくして近所の子供が来て、猫をじゃらしはじめた。無理無理…といってる側から猫がじゃれついていた!

?然としている僕を尻目に楽しそうに遊んでいる。頼み込んで仲間に入れてもらうと、やっぱりじゃれない。

あはは、と笑われてしまった。聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥。"どうやったら猫じゃらせますか"と聞いてみた。

「それはねー、虫とか鳥の気持ちになればいいんだよ」

ああそうか、なるほど!というか基本中の基本を忘れていた…。いままでは"人間の気持ち"である"猫と遊びたい"が表に出過ぎてたのだろう、それは人間の目線だ。

猫と深く関わるようになって得た知識が逆に邪魔していたのかもしれない。

虫の気持ち…虫はどう動く…こう動くはず…猫じゃらしを虫の気持ちになって動かす、すると!

見事にじゃれついて来た!やった!あまりに嬉しそうにしているので子供がドン引きしていた…。

昔は子供だった。それが歳をとって僕は"猫のじゃらし方"をどこかへ置いてきてしまったのだ。

思わぬところにその忘れ物が落ちていた。

その後は久しぶりに遊びに熱中してしまった。猫も疲れただろうに…ごめんね。

もう陽もだいぶ傾いてきた。上を見ると昔見た夕焼けみたいな空が広がっていた。

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