この世界の片隅で、ネコ。EP:34「進化論」

「進化論」

再開発地区に指定されているこのあたり。昔の景色は見当たらなくマンションだらけになってしまった。

コンクリートとアスファルト。

唯一、土が見えるのは神社だけ。そこへ避難するように猫たちが暮らしていた。

ここにいる猫たちは"黒の一族"と言っていい程、黒系統の毛色を持つ猫が大半を占めている。

黒猫たちは親戚なのか、とても仲が良い。助け合って生きている。

日中、年少の猫たちは境内で走り回って遊び、大人たちは舗装された道路を慎重に歩き、それぞれの仕事に精を出している。

そんな一族とは対照的に一匹だけ、白猫がいた。

黒猫一族からは距離を置き、かといって敵対する関係ではなく共存している。黒一色の中の白。人間から見ると、とても目立っていた。

…そしてボランティアさん達がやってきて餌の時間。

黒猫一族が餌を求め良い場所を陣取る。白猫は…ポツンとその後ろに控えている。黒猫は大きな声で鳴き餌をねだる。

「ニャーニャー!」「二―二―!」「ニャオーン!」「アオーン!」「ウニャー!」皆、餌をもらうのに必死だ。そんな時。白猫はこう鳴く。

「フェッフェッフェッ!」

なんとも笑ってしまうような鳴き声。ボランティアさんも思わず白猫を見て笑う。そして餌を無事にゲット。

黒一色の中に白色がいると人間には目立って見えるかもしれない。けれど猫の身になると神社では圧倒的少数の白。マイノリティーだ。他より自己の存在が薄いと考えたのだろう。

そこで白猫は「鳴き声」を武器にして人間の気を引こうとしていたのだ。

キリンは高い木の葉っぱを食べようと首が長くなった説がある(他説もある)。白猫は鳴き声で人間の気を引こうと"ヘンな"声を出すようになった。

つまり…白猫の子孫は"ヘンな"鳴き声を出すように"進化"するのか。そう考えると笑ってしまった。

text&photo/Yokoo Kenta

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