この世界の片隅で、ネコ。EP:33「子供の記憶」

「子供の記憶」

子供の頃の記憶。

入学式、夏休みの宿題、ラジオ体操、給食…そして初恋。色々思い浮かぶ。

だけど"子供"の頃から数十年たってみると忙しい日々に忙殺され「そんなこともあったなぁ」の一言。唯一、写真だけがそれを記録しているのみかもしれない。

猫の場合も子供の頃の記憶は「そんなこともあったなぁ」なのか。

幼馴染であるレイジくん(オス)とチャーちゃん(メス)。多くいる同年産まれの仔猫の中でこの2匹の絆は固かった。

何をするにも一緒でとても仲が良く微笑ましい。なぜそうなったかはわからないが…。

レイジはこの地区に多い黄色の毛色でフツーだが、チャーは少し変わった茶色の毛で目立っていた。

だけど子供は子供。遊ぶことに必死で皆、仲良くやっていたり喧嘩したりまた仲良くなったり…繰り返し。電池が切れると皆でウトウト。夢の中でも遊んでいるのだろう。

だけど時間は過ぎていく。

年月が経ってもはや大人。いよいよレイジくんの世代も恋心が芽生え始める。

フツーの毛色のせいか注目を浴びずモテない彼。逆に毛色のせいで注目を浴びモテる彼女。

しかし。チャーちゃんはあっけなく冴えないレイジくんを選んだ。

きっと猫の記憶は
「そんなこともあったなぁ」
ではなく
「そんなことがあったから」
なのだろう。

ただでさえ人間の何倍ものスピードで過ぎていく日々。"子供の頃"はほんちょっと前で鮮明に記憶が残っている。

僕自身がフツーの毛色で冴えない。だからあれは痛快だった。

text&photo/Kenta Yokoo

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