この世界の片隅で、ネコ。EP:32「失業中」

「失業中」

お米屋さんと猫。もうこれだけで日本的な光景が目に浮かびそうだ。「職業は?」と質問されたら「ネズミ捕り」です、と答えるだろう。

米屋にとっては"雇う"価値があり、猫も"雇われている"誇りがあるかもしれない。

下町のお米屋さんのミケちゃん。新しい店舗になってネズミがいなくなったそうで、ミケちゃんはやる事がなく暇してる。

日がな外をブラブラして何かを探してる。もしかして仕事探し?

失業しちゃったもんね…。

最近の猫の就職戦線はどうだろうね。ネズミ捕り目的で飼われる猫は随分減っただろうし…そもそも当の本人の職業意識が足りない場合もあるし。

お米屋さんの新店舗が建築中、すぐ近くの古い長屋に仮店舗をおいた。

すると翌々日には今まで結構いたネズミたちが姿を消したそうだ。長屋には猫自体はそれまでもいたのだけれど。

ミケちゃんはプロだ。本職の"ネズミ捕り屋"。いままでとは明らかに違う雰囲気を持った猫が来て、様子を見に来たネズミたちが恐れをなして逃亡したのだ。

そして新店舗が完成。本来はめでたしめでたしなのだが…。

「すごいんだねミケちゃんは」

そう言ってみて

「でもね…暇な事ってお米屋さんとってはとても良い事なんだよ」

けれどミケちゃんは尻尾をバタバタさせて相変わらず何かを探していた。

text&photo/Kenta Yokoo

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